|
級友の叔父 その日、ディーノはスクアーロの自宅へと遊びに来ていた。 散々強請って拝み倒してしつこく食い下がった結果の勝利だ。喝采を叫んで大喜びしたディーノだが、実は今それを後悔していた。 間の（？）悪い事に、スクアーロの保護者たる叔父も家にいたのだ。彼の家だからそれは当然なのだが、人見知りしないディーノにしては珍しく、スクアーロの叔父の存在を非常に居心地悪く感じたのだ。 トイレへとスクアーロが立った為、件の叔父と居間に二人きりにされたディーノは、緊張にシャチホコばりながら、恐る恐る目の前にすわる男を盗み見た。 静かにカップを傾けている（スクアーロが入れた！！）落ち着いた物腰の何処までも紳士然とした相手なのに、このひしひしと伝わってくる圧迫感というか、脅迫じみた気配はなんなんだろう。 視線に気付いたのか、男がふいとそのスクアーロと同じ銀灰の瞳でディーノを見る。 蛇に睨まれ蛙の心境がわかった瞬間であった。 「君は、スクアーロの同級生だったかな？」 穏かな問いかけに、しかしディーノは跳び上がって答える。 「は、はい！！よく世話してもらってます！！」 「あれが誰かを家に連れてくるなんて、初めてだよ」 言葉面だけを聞けば、甥が友人をはじめて連れてきたことを喜ぶような台詞だったが、なぜか素直にそうとは受け取れなかった。 笑う目尻によった皺さえ、安心できない。 真っ白になった頭で、とにかくスクアーロが戻ってくるまでどうにか間を持たせようと、ディーノは日常生活での失敗やら学園でのことを喋り続け、いらんことまで口走ってしまった。 「そ、そういえばあいつ学園祭で眠り姫の役やったんですよ！！」 「ほう？」 きらりと男の目が愉しげに光ったのに、ディーノはますます恐慌状態に陥った。まるで獲物を見つけた肉食獣だ。 猛獣と一緒にの檻に閉じ込められているのとなんら代わりは無い。 「しゃ、写真持ってるんですけど、見ますか！？」 「是非、お願いしたいね」 私は仕事でいけなかったから、とゆったりと微笑む男へと、ディーノは半泣きになってがさがさとカバンを漁ってひっくり返して、見つけたそれらを王様にするように差し出した。 トイレから戻ってきたスクアーロが、写真を片手に爆笑する叔父を見て、ひた隠しにしていたらしい秘密を暴露された事実に激怒してディーノは当然凹にされた。が、殴られる最中も何故か命拾いをしたとしか感じられず、彼はひたすら安心しまくっていた。 後にスクアーロの叔父が剣帝だったと知ったディーノは、あの時へたな事してたら、殺されたかもしれないと青褪めたのであった。 叔父さん、年下の恋人へつく悪い虫を牽制牽制。そしてちょっとでも気に障ったところがあれば即あの世へ旅立ってもらう気満々でした。 ちなみに、スクアーロが学際で女装したのは殆どディーノの所為。 ちょうど決闘で学校を休んでいる日に、クラスの出し物が劇に決まって、配役の段になってディーノは王子さま役に決定したんですが、お姫様役を誰にするかで揉めました。（男子校だったので） 誰もが女装したくなくて押し付け合う中、ディーノが「じゃーオレが決めるなー？」と言ってさっさとスクアーロと黒板に書きます。 青褪める周囲に向かって「へーきへーき。あいつ細身だから、気持ち悪いってほど気持ち悪くならねえよ。大体、目付きが悪いだけで、顔自体は綺麗なんだよなー」と呑気にへらりと笑うディーノに、そういう問題じゃない！！と皆さん心の中で絶叫しました。 しかしなんだかんだでスクアーロに決定。 スクは学際当日に知りました。民が怖がっていえなかったので 眠り姫なんて、最初と最後に出てくるだけで後は眠ってるようなもんなので、台本見なくても問題無し。 そしてスクアーロ、根が真面目なのとディーノにほだされたのとで着ちゃいました、ドレス。 胡座かいて片膝立てる柄悪い不機嫌面お姫様。ウィッグ無し。あの短髪スクでお願いします！！（っていうか誰か描いて私に恵んで！！絶対可愛い！！！） おもっくそ不機嫌なスクアーロへディーノは「変ってほど変じゃないから、安心しろって」と的外れな慰めをします。てめぇのせいだろと、勿論ぼこりましたよ？ ディーノは青たんさらして舞台に立ちました。 勿論スクはテュールへ隠しとおしました。 きっと大笑いされてからかわれる事間違いなしですから。 ディーノの所為で無駄になりましたが。 挙句、後日テュールから御曹司へと連絡が行き（写真は無かった）、ザンザスにも 「てめぇ女装したそうだなぁ？さぞ滑稽だったろうよ」 と馬鹿にされたり。 ちなみにキスはしてません。スクアーロもぎりぎりまで耐えたんですが、我慢できなくなって飛び起きて恥ずかしくってその場で剣抜いて暴れ出しました。（よかったね、ディーノ。君はそのおかげで命拾いしたんだよ。実際にしてたら、テュールによってあの世へ送られてたんだから） 合掌 |